2019年05月10日
アクセシビリティキャンプ東京 2019 GAAD 発起人と振り返る「 CSUN 2019 」参加レポート
「アクセシビリティキャンプ東京 2019 - GAAD発起人と振り返る 「 CSUN 2019」を聴講してきました。
今回は GAAD(Global Accessibility Awareness Day)の発起人の1人である Joe Devon さんのお話が聞けるということではりきって参加をしてきました。
さて、今回の情報保障は、UDトークという音声認識技術使ったをアプリを使用したリアルタイム字幕でした。
日本語を自動翻訳で英語にする、という形で進行。自分のスマホにアプリをインストールして手元で字幕を見ることができるので、とても便利でした。
世界最大級のアクセシビリティカンファレンス
今年で 34 回目の CSUN の正式名称を、CSUN Assistive Technology Conference といい、世界最大級のアクセシビリティをテーマにしたカンファレンスです。Johanna さんという NASA のコントロールセンターで聴覚障害者としては初めて搭乗員の飛行試験に従事したエンジニアの基調講演からスタート。本人が手話で発表、手話通訳の方が会場に言葉に置き換えて話すという日本ではなかなか見ることのできないスタイルだったようです。
Johanna さんの基調講演の動画(ご本人が出てくるのは45分ぐらい)基調講演以外にも、各セッションで手話によるプレゼン、リアルタイム字幕のスクリーン表示、触手話(目と耳が聞こえない人のための情報保証)を使った情報保障が準備されていたとのこと、さすがですね。また、今年は教育関係のセッションが多かったようです。それ以外にも 100 を超える展示ブースがあったそうで、拡大代替コミュニケーションツールが紹介されました。
Joe Devon さん
普段はソフトウェアデベロッパー、モバイル、web、テレビショー、スタジオなどを手がけている JOE さん。
アクセシビリティを意識するようになったのは、Yahoo! の視覚障害者のプログラマーがスクリーンリーダーを使用して、Yahoo! のサイトを見たらどのように見えるのか、というビデオをみて衝撃をうけたから、だそうです。
Global Accessibility Awareness Day
Global Accessibility Awareness Day とは、GAAD と呼ばれ、2012 年に、毎年 5 月の第 3 木曜日を「アクセシビリティ」について考えたり、語り合ったりする日としてスタートしました。
プログラマーとして常に最新の技術に興味のある自分がスクリーンリーダーを知らなかった。もしかしてデザイナーやプログラマーも知らない人が多いのではないか、他の人にもグローバルなアクセシビリティを知ってもらう日を作ろう、と思ったのがきっかけだそうです。
アクセシビリティはすべての開発者が知っているべきで、プロセスの一環としてアクセシビリティはあるべきだ。アジャイル開発と同じぐらいの認知度へ、また開発のプロセスの一環として考えてほしいと思いを伝えてくれました。
日本では 5 月の第 3 木曜日(今年は 5 月 16 日です)にあわせて「アクセシビリティの祭典」も開催されています。 アクセシビリティの祭典ではアルファサードも協賛、弊社代表の野田がスペシャルトーク「企業とアクセシビリティ」で「ウェブアクセシビリティで企業価値を高める、小さな会社の戦い方(仮)」で登壇します。ぜひ足を運んで新しいアクセシビリティ技術に触れて体感してきてください!
最近アメリカでは訴訟されたウェブサイトが急増しているという話題へ。
提訴されたサイトは 2015 年の 57 件から 2018 年の 3 年後には 2285 件へ 40 倍になり、理由として利益が入ることで弁護士が対応し始めているとのこと。アクセシビリティに対して訴訟をおこして勝訴すると法律上機構から利益が入ってくるので、アクセシビリティや人権に興味のない弁護士たちが対応し始めているというのが現状で、コミュニティにとってはあまりいい状況ではないそうです。
アメリカと日本の web アクセシビリティに関する法律について
以前ブログでも書きましたが、日本には web アクセシビリティに関する正式な法規制はありません。そのことについても言及されていました。日本の法律が未整備なのは、自分の権利を強く主張するアメリカの文化との差も関係しているのでは?とのこと。日本での法制定を進めるために、それぞれが今日のセミナーの情報などを積極的にシェアしたりしてほしい、とのこと。頑張ります!
ADA(正式名称 Americans with Disabilities Act ) は、アメリカの基本的人権を守るためのもので、アメリカで仕事する企業は外国国籍の企業でも必ず守るべきもので、最近はアプリや web 、モバイルの他に web アクセシビリティに関連する内容も含まれていいます。日本のグローバル企業でも対応が始まっているそうです。
ある動画が JOE さんから紹介されました。ワシントンの政府機関へのアクセスが不便な事に対し、実際に車椅子利用者たちが車椅子を使わずに階段を上るという身をもって抗議した結果、当時の大統領であるリーダーを動かし ADA を制定した、というものでした。
前に進むために誰かが動かなければならない。同じことをどのようにして進むか、どのように行動するかを考えていかなければならないと話してくれました。
CSUN で大人気のセッションを持つ、デジタル分野のアクセシビリティを専門に活動しているレイニーさんという弁護士のお話がでました。ストラクチャーネゴシエーションという、改善するために協力して改修提案する方法で提訴し、W3C や WCAG2.0 の AA レベルで改善するという意思表示を企業団体側がすることで、裁判ではなく経過観察という形にするとのこと。これは企業にとっても、情報を提供される側としても建設的でよい方法ですね。
CSUN で印象に残ったものは?
マイクロソフトの 25 万ドルのファンディングで AI 使った支援技術を作る企業に寄付、資金提供すると発表に衝撃をうけた、とのこと。そのほかにも、ロリポップキャンディの先にカメラがついており、舌の上に置くことによってそのカメラで見たものを電気信号を通じて脳の視覚に刺激を与えて写真を見ることができるという展示がとても印象的だったそうです。
日本人参加者座談会: CSUN 2019 を振り返る
ここからは日本企業から参加された方たちによる CSUN 振り返りです。
中根さん、サイボウスの小林さん、斉藤さん、コンセントの中村さん、足立さん、佐野さん、ミツエーリンクスの畠山さんによる座談会です。リサーチャーやデザイナー、ディレクターの方です。中根さん自身は全盲の視覚障害者の当事者として参加してきたとのこと。
みなさんの印象に残ったことで多かったのが、毎年来ているという噂のあったスティーヴィー・ワンダーに会いました!というものでした。何人かの方は一緒に写真を撮ったそうです。羨ましい!
WCAG2.1 の話題やモバイルや認知に関するセッションが増えたこと、英語は話せないが、IT の力で翻訳ソフトを利用してコミュニケーションとったり優しく迎え入れてくれた、という話が印象的でした。
犬好きとしては、スタンダードプードルやシベリアンハスキーなど日本では見られない犬種の補助犬がいた、というのが大変興味深かったです。
また、白状を持った人でも自主的に動いている人が多かったが、周りにいる人が必要な時だけサポートしており、気軽なコミュニケーションが多くみられたとか。また手話通訳の身振り手振りが大きかった、などがアメリカらしいエピソードもありました。
印象に残ったセッションは?
- 段階を踏んでどう進めていくかというストーリー仕立てで説明されていた、アクセシビリティのプロセスやチームへのとりいれ方
- アクセシビリティにはコストがかかる
- 発達障害当事者によるデジタルコンテンツの使いにくさの紹介
- 認知的な障害、認知的能力を考慮してデザインする
- モバイルについてのアクセシビリティ
- Amazon の障害者雇用の取り組みについて
たくさんあった中で印象に残ったのは、紙のデザインを担当されている佐野さんの文書のアクセシビリティにはコストがかかる、というもの。Word が持つ機能で、見出しやスタイルの機能を正しく使ったドキュメントがあれば、それを PDF にする際に、ドキュメント作成工数が削減されるというグラフが紹介されていました。たしかに Word にはそのような機能がありますが、意外と見出し以外は使っている人は少ないのではないでしょうか?機能を正しく使ったドキュメントで PDF を作成すれば、そうではないドキュメントに比べると 33 %の努力でアクセシブルな PDF ができるそうです。PDF はアクセシブルではない、と言われますが作り手によってだいぶ変わってくる、ということになりますね。
障害者雇用の取り組みで、開発で多様な人材が社内にいることはプロダクトにいい影響がある、ということに価値を感じているというのも日本と考え方が少し違うなと感じました。また、アクセシビリティに取り組む文化が会社に根付いていて、日本は簡単には追いつけないという感想にも非常に考えさせられました。
印象に残った展示は?
- Tap System
- Buzz Clip
- チェックツール
- BrainPort Vision Pro
- Deque のブース
紹介されていたものの中で印象に残った物は実際に中根さんが衝動買いしたという、Tap System です。Bluetooth で PC にペアリング、キーボードと同じように使えるもので、それぞれの指にはめて操作している様子が紹介されました。中根さんが実際に指にはめた状態でも見せていただきました。片手操作が可能なので、展示ディスプレイを使用しながら利用できて大変便利とのこと。日本語版変換や NVDA 操作、またマウスとしても使用できるのでとても可能性を感じるものだそうです。手を下げたままでも操作できるので肩凝り解消によさそう?なんていう声もありました。
みなさんは CSUN に行くことをおすすめしますか?
最後にみなさんに質問されていました。みなさん回答はイエス。やはり当事者の声が聞けることや、web 以外のアクセシビリティに触れあったり、最新の技術やデモを見たりできることもあって、得るものは多そうですね。
CSUN 2019 の振り返りを聴講して
JOE さん含め CSUN に参加した方たちの話を聞いて、デザイナーとしてデザインや設計の段階からアクセシビリティを組み込むやり方はやはり効果的であると確信しました。それと同時に、自分だけではなく、社内へのアクセシビリティ啓蒙が改めて大切であると認識しました。
普段自分はアクセシビリティに関わっているので常に意識していますが、一般的にはやはりまだまだ浸透していないということですね。まずは社内からアクセシビリティを浸透させていきたいと思います。
参加者全員にプレゼントが当たる抽選で最初にくじをひきましたが、なんとマグカップが当たりました!忍者好きの私の子供に奪われがちですが、大切に使わせていただきます。
アルファサードの web アクセシビリティの取り組み
弊社では、web アクセシビリティ向上への取り組みとして、無償ツールの提供の他、「 JIS X 8341-3 」への準拠を支援する「 PowerCMS 8341」の開発・提供、各種サポートサービスを行っています。評価版もございますので、実際にお試しの上、安心してお使いいただけます。お気軽にお問い合わせください。
Web アクセシビリティに関する弊社製品・サービス
- PowerCMS 8341
- 「 JIS X 8341-3:2016」準拠支援ツール
導入事例:公益財団法人 長寿科学振興財団様 「 Webアクセシビリティへの対応と、PowerCMS クラウドの使いやすさ、運用への安心感が選定の決め手となりました。」
- 自治体向けクラウド版 CMS
- 「 PowerCMS 8341」が付属し、「 JIS X 8341-3:2016」に準拠したテーマを設定済みの、自治体向けのコンテンツ管理システム
- ColorTester
- 「 JIS X 8341-3:2010」( WCAG 2.0)の達成基準に基づき、画像の背景色と前景色のコントラストを確認するソフトウェア
- ColorQuest
- スクリーン上の色の名前を表示するソフトウェア
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- PowerCMS 8341
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